前回のエントリーで、見だめしたDVDの話しを書き留めるつもりが、「瞳の奥の秘密」(これは名作!)のことで一杯になり、その他のタイトルについては次回、としながら1ヶ月たってしまいました・・・
あらためて、他の3作について、ちょこっと備忘録的に書きます。
以下に、ストーリーに関する記述があるので、ご注意下さい。
「抱擁のかけら」 (Los Abrazos Rotos:原題はスペイン語ですが、「壊れた抱擁」くらいの意味で、邦題もそれに近いものです)
ご存知、ペネロペ・クルス主演のスペイン映画。監督は「ボルベール」でやはりペネロペ・クルスと組んだスペインを代表する巨匠、ペドロ・アルモドバル。
ある事故で眼を失い、名前も変えた初老の元映画監督(今は脚本家)を一人の若者が訪ね脚本を依頼するところからストーリーが始まります。そして、彼が新進の監督だった頃、一人の美しい役者志望の女性(ペネロペ・クルス)と出会い映画を撮ることになり、その女性と激しい恋に落ちた過去に話しが遡ります。実はこの女性は富裕な実業家の愛人でその映画のスポンサーでもあったのですが、その眼を盗んで恋に落ちた訳です。しかしその実業家は息子を監視役として現場に送り込み、二人の姿を盗撮させました。そして、二人は逃避行を行うのですが、ついにその旅先で・・・
恋愛ものであり、ミステリー仕立てになっているのは、前回書いた「瞳の奥の秘密」とも同じ構造です。でもこちらはさらに複雑というか、いろんなものが入れ子構造になっています。老監督を訪ねてくる若い監督がかつてのパトロンの息子で、彼らを撮っていた男であったという話しがあったり、ペネロペを主人公に撮った映画が実は未完成だったのに、逃避行の間にその富豪が勝手にひどい形で完成させてさんざんな酷評に合わせるという展開があるのですが、劇中劇(映画中映画?)という構造まではいかないのですが、ラストではその作品にまた還っていくという展開になります。
そして、現在の彼の身の回りを世話している青年がいるのですが、彼の母親は老監督のエージェントを昔からしている女性(彼女が、またいい演技をしています)です。そして、その彼女と老監督との人間関係も入り組んだストーリーをさらに濃厚なものとしています。
サスペンスなので、これ以上は書きませんが、全てが濃厚で苦しいくらいの愛憎劇なのです。でも、最後にようやく癒しというか再生の兆しを見せて終わってくれる、そんな話しです。
そして何と言っても、ペネロペ・クルスのための映画、そんな印象です。本当に美しく、そして危なげな感じの役をうまくカメラが捉えています。色彩も鮮やかで、彼女の魅力をとてもうまく伝えています。
おまけ(笑)ですが、二人が逃避行する先が、カナリア諸島のランサロテ島という島なのですが、ちょっと行ってみたくなりました・・・
「ずっとあなたを愛してる」 (Il y a longtemps que je t'aime) やはり原題に近い邦題ですね
フィリップ・クロデールの第1回監督作品、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞など、受賞多数。
6歳の息子を殺害し15年の刑期をおえて妹夫婦のもとに身を寄せることになった一人の女性の、再生の物語。イングリッシュ・ペイシェントでアカデミー賞にもノミネートされたクリスティン・スコット・トーマスが主演。すばらしい演技を見せてくれています。
ストーリーはきわめて重く、彼女がなぜ息子を殺したのかは最後になってようやくあかされます。それよりも彼女と暮らすことになった妹夫婦やその周りの人達との人間関係の話しがずっとメインで、しかも淡々と続きます。妹も幼い頃に姉が犯した犯罪なので両親からも姉のことを忘れるように言われていたり、微妙な人間関係がベースになったヒューマンドラマとして作られています。
しかし・・・最後にようやく、なぜ彼女が息子を手にかけたかが明かされ、しかも彼女は医者であったことも途中でわかり、そして裁判でも一切自己弁護をしなかったという設定になっているのですが・・・そこがちょっと説得力がないというか・・・うーん、他に方法なかったのか??(あるいは裁判で基本的なことは分かってしまうだろう?とか)という気持ちがのこります。役者も最高の演技を見せてくれるだけに、そもそもの設定にちょっと感情移入ができない、といった感じでした。でもとてもいい映画でした。
「フローズンリバー」(Frozen River)
どうも今回は、重い映画特集となってしまいました。それぞれ、再生に向かって進む結末にはなるのですが・・・
これは、今のアメリカの抱えている問題がベースになっています。
国境を越えた不法侵入といえばメキシコ国境のイメージがあり、「トラフィック」などの名作もそこを舞台に描かれていますが、この映画の舞台はカナダとの国境、しかも、いわゆる先住民族(モホーク族)の居留区が両国にまたがっており、いわば一種の治外法権化しています。
ここを舞台に、旦那がでていったプアホワイトの女性とその息子、そしてその居留区でも厄介もの扱いされている女性が主な出演者です。
彼女は、壊れかけたトレーラハウスに住んでいて買い替えるための金を旦那が持って出て行ってしますため、どうしてもお金がいる、そして居留区の女性も死んだ夫との間の子供を義理の親から取り戻すためにやはりお金が必要。最初は反目しあっていた二人だが、どうしてもお金がいることで協力して犯罪(不法越境)に手を染めていく。
氷が張った河を車で渡るのだが、これが彼女達の人生を象徴している、まさに薄氷というやつだ。この凍てついた風景が全てを物語ってくれます。そして・・・
最後は、この女性二人がどういう行動をするのか・・・やすっぽくなりがちな結末を最後まで冷徹な眼で、ヒリヒリした感覚を残したまま描ききっています。「友情」なんていう言葉や、涙なんか出幕も無い感じでした。
いやー、アメリカって本当に面倒な問題山積みな国だなあと思わずにはいられません。少数民族に対するこの政策もどうよって感じですし、なにより貧困。しかし女達(特にオカン)の方がどう見ても逞しいです・・・はい。
最近のコメント